主な特徴
ジョン・メイヤーがMcCarty 594の開発に関わったことも、このモデルが大人気となった理由の一つではありますが、なによりもPaul Reed Smith氏本人の研究心・探究心に終わりのないことが、このギターの特徴に表れていると思います。
PRSはもはや世界を代表するギターメーカーになりましたが、それにあぐらをかくことなく、常にサウンドやプレイアビリティの向上を目指し、新しいモデルを発表する毎に進化をし続けているところに共感が持てます。
McCartyも御多分に洩れません。
古き良きヴィンテージトーンを奏でつつも、最新のプレイアビリティを持つギターと言えるでしょう。
McCarty 594の主な特徴は以下の7点。
- スケールの長さが594であること。
- ネックシェイプがPattern Vintageになっていること。
- ブリッジが2-Piece Stoptail, Cast Zincになっていること。
- ピックアップが58/15 LTになっていること。
- 3Wayのトグルスイッチの位置がレスポールと同じ位置になったこと。
- 2Vol・2Toneになり、ToneノブのPush/Pullで各PUのコイルタップができること。
- ペグがPhaseⅢ Locking TunersからTweeked PhaseⅢ Locking Tunersに進化したこと。
詳細
スケール
一般的なギタースケールは、Fenderストラトキャスターに代表されるロングスケール(25.5インチ)と、Gibsonレスポールに代表されるミディアムスケール(24.75インチ)、Fenderムスタングやジャガーに代表されるショートスケール(24インチ)の3種類に分かれます。
しかし、Paul Reed Smith氏本人が所有するレスポールは、24.75インチではなく24.594インチ。
氏はそれにインスパイアされ、このモデルのスケールが決まり、ひいてはモデル名になったと言われています。
他にない独自スケールならではのテンション感、弾き心地は病みつきになりますね。
一方で、ミディアムスケールよりもさらに短いスケールとなるため、どうしても弦の張りが緩めとなります。
そのため、個人的には普段.009-.046の弦を使っている方でも、.010-.046を使われることをお薦めします。
ネックシェイプ
既に好評のPatternネックのシェイプをさらに進化させたものが、Pattern Vintageです。
これは、レスポールの生みの親であるTed McCarty氏が使っていた1953年製のレスポールのネックシェイプを再現したものだと言われています。
現在、PRSのネックシェイプには、Pattern、Pattern Thin、Pattern Regular、Pattern Vintageの4種類がありますが、ボディ側のネック幅はどれも同じ2 1/4インチ。
ナット側のネック幅も、Pattern Regularが1 21/32インチである以外は、全て1 11/16インチです。
それではPattern Vintage最大の特徴は何でしょうか?
それはナット側のネック厚なのです。
PatternとPattern Regularのネック厚は27/32インチ、Pattern Thinのネック厚は25/32インチですが、Pattern Vintageは28.5/32インチと最も厚みがあります。
サウンド的にもネックは太いにこしたことはありませんが、プレイアビリティとの兼ね合いからやむなく薄くしているケースがほとんどです。
Pattern Vintageは、ネック厚はあるもののハイポジションにいくに連れ次第に薄くなるという凝った仕様になっており、握りやすさと弾きやすさを兼ね備えたネックシェイプになっていると言えます。
ブリッジ
ブリッジをオリジナルで製造しているギターメーカーは珍しいと思います。
McCarty 594には、オリジナルのPRS2-Piece Stoptail, Cast Zincが採用されています。
弦が直接触れるサドル部分には削り出しのBrassを採用するなど、鳴りを良くするための細かな工夫が、ブリッジ・パーツにも伺えます。
ピックアップ
Ted McCarty DC245には57/08ピックアップ、McCarty58には当初57/08ピックアップ、その後マイナーチェンジで58/15ピックアップが搭載されていました。
実は、McCarty 594もその流れを汲み、58/15ピックアップを改良した58/15 LT(Low Turn)ピックアップが搭載されています。
ヴィンテージトーンを意識した暖かいサウンドが出せるよう、敢えてLow Turnにして出力を抑えているようです。
王道のロックサウンドはもちろんのこと、クリーンやクランチにも向いていますので、最近、私が好きなJazzにも最適だと思います。
一方、Custom22やCustom24に搭載される85/15ピックアップは、リアPU(Bass)の出力が若干高いものの傾向は58/15 LTピックアップと似ていると言えます。
しかし、フロントPU(Treble)はミッドやハイになる程ピークを持ち上げ出力が高くなる設定になっており、58/15 LTピックアップとは全く異なる性格のピックアップだと言えます。
3Wayトグルスイッチ
3Wayのトグルスイッチの位置も、他のPRSとは異なりレスポールと同じ位置に移動されています。
高中さんのように、曲中で頻繁にピックアップを切り替える場合、やはりこちらの位置の方が使いやすいのは間違いありませんね。
ボリュームノブ・トーンノブ
2つのトーンノブをそれぞれをPush/Pullすることで、フロント・リアのピックアップを別々にコイルタップすることが可能です。
3Wayのトグルスイッチとうまく組み合わせれば、2ハムのギターであるにも関わらず、なんと7種類のサウンドを出すことができます。
また、見逃せないのが、2つのボリュームノブの絶妙な位置。
この位置に配置することで、2つのボリュームを片手ワンアクションでコントロールできるなど、細かな部分にまでプレイアビリティの配慮がなされています。
チューナー(ペグ)
チューナ(ペグ)をオリジナルで製造しているギターメーカーは珍しいと思います。
それだけ音に対する強い拘りがあり、パーツ一つにまで妥協を許さないということなんだと思います。
ギアの滑りを防止し、弦振動ロスを抑え、可能な限り弦振動をボディへ伝えるために、McCarty 594では、チューナーがPhaseⅢ Locking TunersからWeeked PhaseⅢ Locking Tunersへと進化しています。
また、更に鳴りを高めるための工夫として、2018年以降のMcCarty 594では、ペグボタンに削り出しのBrassがデフォルトで採用されているようです。